lattegoto’s diary

アニメや漫画の考察を書いていきます。

漫画やアニメの考察を、「元国語の教材制作者」としての知見から掲載します。
なお、ネタバレがあるのでご注意ください。
当面は「やがて君になる」の原作の考察を更新します。

やがて君になる 最終話を予想してみた

 みなさん、こんにちは!!

 

 この前、久しぶりに前職の同僚たちと飲み交わし、やがて君になるの考察会を行ったので、議題に上がったことを書き記します。

 

 今回は、

1巻の見どころ

最終話の予想

 を中心に記載します。

 メインは「最終話の予想」です。現在の侑を見ていると、複雑な心境になってしまう結果となりました。

 

 ちなみに考察会に参加したメンバーは、私以外現役の国語の教材制作者であるため、読解力には一定の信頼がおけると思います。

筆者:元国語の教材制作者

   アニメ全話視聴済み→原作全巻読破済み 

A氏:現役の国語の教材制作者(メンバーの中で一番のベテラン)

   原作全巻読破済み(アニメ未視聴)

B氏:現役の国語の教材制作責任者

   原作1巻読破済み(アニメ未視聴)

  考察会に至った経緯は、「やが君」にはまった私がもっと深く読みたくて、知人であるA・B両氏に作品を勧めて会を開くに至ったというものです。

 私はアニメから入ったくちですが、A・B両氏はともに原作オンリーだったため、入り口が違うと作品の見方も異なる、という点に気づきました。

 なお、蛇足となりますが、開催場所は「百合の聖地 新百合ヶ丘(←勝手に名付けました)です。

1巻の見どころ

 参加したメンバーのうち1名が1巻までしか読破していないため、必然的に話題は限定されました。

 到着するなりお2人とも「やが君」の魅力をとうとうと語りだしたのが、良い意味での裏切りでした。というのも、お2人とも百合漫画を普段から読むタイプではなかったためもっと淡泊な反応が返ってくると予想していたからです。

 が、良い意味で予測が裏切られ、やが君のもつ底力をあらためて思い知らされました。

 なおA・B両氏とも女性です。

 話を進める中で興味深かったのは以下の点です。

やが君の魅力

 両氏がやが君の魅力に関して、真っ先に口にしたのはコマ割り全体構成細かい心理描写の緻密さです。

「絵がコマ割り含めてすごく好き」「作者すごい!」

「登場人物が魅力的」

「心理描写が丁寧」

 と大絶賛でした。特にコマ割りに関して真っ先に口にされていたのは、アニメから入った私としては新鮮でした。

 いや、でもそりゃそうですよね。だってコマ割り、尋常じゃないですもん。

 

 ちなみにA氏が、第1話を読んでいるときに感嘆し、「これは全巻読み進めよう」と決意されたコマがあるのですが、どこだかわかりますか?

 

 

 

 答えは、P.17の「朱里・こよみと侑の机が離れて配置されているコマ」です。

 A氏は「やが君を百合漫画とは認識せず読み進めていた」とのこと。そのため、当初は朱里・こよみ・侑の関係性に注目していたわけです。そこで「他人とは違う」という侑の孤独感・寂しさを会話ではなく、離れた机の構図でビシッと表現しているこのコマにしびれたとのことでした。

 こちらに関しては、「やが君は百合アニメである」という先入観のもと、さらにはアニメから作品に入った私とでは、印象の濃度がかなり異なっていました。

作品の楽しみ方(原作かアニメか)

 上記の話から、私はアニメ版をA氏に勧めたのですが、断られました。

 理由としては「アニメは、キャラクターの声や行間が補完されてしまうため、想像できる余地が限定されてしまうから」というものでした。

 この意見も、普段アニメを見ている私にしてみると新たな気づきとなりました。と同時に、私自身はもう原作を初見のつもりで見ることができないんだ、という事実に気づき、寂しさを感じました。

 とはいえ、アニメ・漫画・小説の各媒体のもつ可能性をより一層強く感じたのも事実です。

 A氏のおっしゃる通り、漫画ならではのメリット・アニメならではのデメリットは確かにあるでしょう。でも逆に、アニメだからこそ表現できることもあるはずです。媒体によって表現の得手不得手は異なるわけです。

 そしてやが君はどちらの媒体も非常に優れた評価がなされていて、だからこそ原作だけ、あるいはアニメだけ、という方はぜひとも両方の媒体を鑑賞して頂きたいな、と思いました。

 最後になりますが、作品の楽しみ方は自由なため、各人の環境や嗜好にあわせるのが最適解かと思います!

佐伯沙弥香の存在

 お2人とも、1巻を読んだ時点で興味を持ったのは沙弥香だったとのこと。

「第1巻でこよみと朱里の名前は覚えていなかったけど、沙弥香の名前は覚えていた」

「明らかに今後キーパーソンとなる存在として際立って描かれていた」

とのことです。

 本作を百合漫画として読み進めたときに、どうしても気になってしまうのは燈子と侑の存在ですが、前提の知識がなく読むと沙弥香に注目せざるをえないというのは、この後の考察にも関わる大発見でした。

 

最終話の予想

 いよいよ今回のメインとなる、やが君最終話の予想です。

 あくまでも6巻までを読んだうえでの考察となります。

 ■各登場人物のゴール

 最終話を考えるために、まず考察しておきたいのは、各登場人物のゴールです。

 各々が何を目指しているのか、がわかれば最終話の予想もつきやすくなるからです。

 6巻の時点で、各人物のゴールをざっくりとまとめると以下のようになるでしょう。

 侑:「特別」を知りたい

 燈子:姉(演じている自分)からの解放

 沙弥香:燈子への想いの実現

 6巻の時点(あるいは5巻まで)では、侑と燈子の利害が完全に一しているため、両者は互いに求めあっているわけです。

 ■燈子と侑の未来

 しかし、ここで一つの疑問が生じます。

 もし、燈子の「姉から解放される」という願いが叶ったとしましょう。そのときに、侑と燈子の利害は完全に一致するのか、というとそうではありません。

 侑は燈子を好きになることで、「特別」という意味を知りかけてはいますが、たまたま最初の相手が燈子だっただけで、燈子を想う必然性はなくなります。

 侑は沙弥香のように女性にしか特別な気持ちを持てない、ということはないため、特別な異性を見つけることはできるかもしれません。つまり沙弥香よりも燈子を想う必然性は薄いわけです。(もちろん人の心はこんなにも単純ではないので、簡単に割り切れるものではないと思いますが。)

 一方で燈子はどうでしょう。そもそもの始まりとして、燈子は侑に恋したかったわけではありません。「誰も特別だと思わない」という侑だからこそ、一時的に姉から解放される安心感を得たくて近づいたわけです。

 もし、燈子がきちんと立ち直り、姉から解放され、自分自身の意思で生きることができるようになったら、それでも侑を求めるのでしょうか?

 立ち直った燈子は人の好意を受け入れることができるでしょう。それは異性であるかもしれませんし、沙弥香であるかもしれません。

 つまり三者のなかで、特定の相手に執着しているのは沙弥香だけだともいえます。

 ■最終話

 ここまでをふまえて、出た結論が、燈子と沙弥香のカップリングです。

 根拠は上記の他にも以下があります。

 ①1巻最後の侑の独白

 ②劇中における三者の役割

 ③都の存在

 

 ①と②は根拠が希薄です。

 まず①は

「『好き』はまだわたしのものにはならないけれど この人の近くにいようと決めた そのためにわたしが諦めなければいけないものに このときはまだ気付かなかったんだ」

 という侑の独白を指します。

 私はこれまで、上記の独白は、6巻までにおける侑と燈子の関係性について述べていると思っていました。

 侑が燈子の近くにいるためには燈子を「特別だと思ってはいけない」ということについてです。

 しかし、この侑の独白はもっと中長期的な意味と捉えなおすこともできます。つまり将来にわたっても侑が燈子の近くにいるためには、常に燈子を諦め続けなければならない、と。

 一方で、この解釈が現時点では根拠として弱いのも否めません。

 

 ②は、劇中における三者の役割である「燈子と沙弥香が恋人」「侑は燈子を治癒する存在」という関係性がそのまま未来像を示しているというものです。

 こちらも堂島君や槙君が、必ずしも現実とリンクしていないため、根拠としては希薄です。

 ただし、必ずしも全員が劇中とリンクする必要はなく、侑と燈子と沙弥香の三者だけがリンクしている、という可能性はなきにしもあらずかとも思います。

 

 そして、現時点でもっとも意味深なのが③の存在です。そもそもなぜ都という人物は作中で描かれたのでしょうか。現時点では、理子と都は同性愛の成功例の象徴として持ち出されたと考えらます。

 しかし、前述のとおり、主要人物のなかで同性愛に対する必然性を抱えているのは沙弥香のみです。さらには都が沙弥香を応援している向きがあるのもポイントです。

 

 A氏は

「やが君は、少女のときに起こりえる性別の境界性をふっと超えてしまう瞬間を描いている」

「私にもそういう時期があったからわかる」

「その後は男性を好きになった」

「だから侑も将来は男性を好きになってもおかしくない」

「ただし沙弥香は女性が好きなんだろうね」

という趣旨のことを述べていました。

 

 今回の議論は、考察会のメンバーが各登場人物を愛し、将来を案じてしたものです。

 その前提での議論であるため、「沙弥香になんとか幸せになってほしい」という感情論に引っ張られた可能性は否めません。

 ただし、侑と燈子は他の誰かとの幸せが想像できても、沙弥香だけはそれがし難かったのも事実です。

 とはいえ、現状ではこれ以上の考察をしても単なる妄想となってしまいます。

 私も心の中では侑と燈子が結ばれることを望んでしまっています。

 ただ一方で、人生の選択では「これが正解だ」という明確なものはないでしょうし、やが君においても3人が納得するという行為を経ることが大事なのかもしれないと思いました。

 そして、その「納得する」、という行為を経て各人が成長していく未来を描ければ、実は誰と誰が結ばれるかという結果はあまり重要ではないのかもしれません。

 

 

2019/3/31/ 初校UP

やがて君になる 第3話 初恋申請

 みなさん、こんにちは!!

 

 さっそくですが、「やがて君になる」第3話の考察を場面ごとに記載していきます。

 第2話は、燈子のキスによって再び戸惑いの中に放り込まれた侑が描かれましたが、今回は侑と燈子の今後の関係性が読者に明示される形で着地しました。

 

 今回は、

「初恋申請」の意味

燈子との比較により強調される侑の悩み

二つの「ずるい」の意味

 を中心に記載します。

 

 なお、以下の場面は考察しやすいように分けているだけで、読解における厳密な分け方からは逸脱している点をご容赦ください。

 

「初恋申請」の意味

 まず初めにタイトルの「初恋申請」の意味を考えながら、あらすじ全体を追っていきます。

場面1(選挙活動の打ち合わせ)

 冒頭では、選挙活動の打ち合わせの場面が描かれます。

 遅れてきた燈子を侑は複雑な表情を浮かべ、見つめています。第2話の最後をふまえれば、当然の反応といえるでしょう。侑は燈子の唇に目を向けていますが、第2話に続いてここでも、「侑→燈子」に視線が向けられているのがポイントです。

 打ち合わが終わり、燈子が侑に声をかけます。侑は、キスしたことを謝られても「…別に気にしてないです」と答え、推薦責任者の任を改めてお願いされても「…わかりました」と答えます。

 一方で、キスされたことに対して「何も感じなかった」と呟いた後、第2話の「君といるとどきどきするの」という燈子の言葉を思い出し、複雑な表情を浮かべます。

場面2(選挙活動)

 続いては選挙活動のシーンです。掲示認可のハンコをもらうため、侑は職員室へ向かいます。その最中、燈子と自分の関係を「うん 普通の候補者と責任者だ」と心の中で再確認します。ここでも侑は燈子を意識していますね。

 そして、職員室でハンコをもらった帰り際に「あいつもきっと喜んでいるでしょう」という先生の言葉をたまたま耳にしますが、当然「あいつ」が誰を指すのかは侑にはわかりません。

場面3(校内新聞の取材)

 続いて校内新聞の取材を受ける場面に移ります。取材の最中も侑は燈子の横顔を見つめています。そんな侑に燈子は「緊張するね」と声をかけますが、その言葉を侑は嘘くさく感じます。

 そして、集合写真を撮るために侑と燈子の身体が触れ合うシーンを迎えます。偶然手が触れ合った直後に「あ すいません」と謝る侑。対して、燈子は「あ うん」とやや動揺して答えます。そんな燈子の様子を侑はじっと見つめています

 直後に、侑は燈子の手を意図的に握ります。頬を染める燈子を見て、侑はさっと血の気が引くような表情を浮かべます。

 撮影が終わり、二人が離れるシーンでは、侑の表情は、初めは前髪に隠れて見えません。しかし次のコマでは「ずるい」と燈子に対して心の中で呟きながら、憎悪にも似た表情が描かれています。非常に複雑な心情ですが、やはり燈子に向けられているのがポイントです。ここまで感情的な表情を浮かべた侑は本作でも珍しいくらいですが、心情の考察は後ほどするとして続きを読み進めましょう。

場面4(喫茶店

 燈子から「明日原稿を一緒に考えたい」という趣旨のお願いをされ、侑は「わかりました」と答えます。一方で、「わたしが勝手に期待して勝手にがっかりしてるだけだ」「わたしと先輩は違うんだよ」と、燈子に対する自分の心情も整理しています。この独白からは、燈子に対して自分と同じであってほしいと期待する気持ちとともに、「違うんだよ」という残念がるセリフから、孤独であることの侑の寂しい気持ちも伝わりますね。実際、雲がかかった夜空(星)を背景に、「わたしに特別は訪れない」という侑の独白でこの場面は終わります。 

 翌日、約束通り燈子と侑は一緒に喫茶店を訪れます。

 「わたしは先輩のこと好きになれない」と言おうと侑は決めていましたが、燈子は「付き合ってなんて言わない」「(侑を)好きでいさせて」とお願いします。

 燈子の想いを「変」と思いつつも、侑は「わたしは……」「…それでいいのなら構いませんけど」と最終的には受け入れてしまいます。

 「……また眩しい思いをするだけなのに」と侑は悔やむ一方で、なぜ承諾してしまったのか疑問に思いながら「……この人はやっぱりずるい」と独白し結末を迎えます。

 

 さて、最後まであらすじを簡単に追いましたが、ここでようやくタイトルの「初恋申請」に戻ります。

 ラストの場面からも「初恋申請」は燈子が侑に行ったものといえそうですが、実は別の側面から捉えなおすこともできます。

 「申請」という限りは、それを受け取る側のことも考えてみます。

 言葉を読み取る限り、侑は本心では納得しないながらも申請を受け取ったことは事実でしょう。しかし申請を受け取ったか否かは表層的な意味でしかありません。燈子を意識し続けているという事実を踏まえると、侑は本人にも自覚がないまま燈子に対して恋をするための第一歩を申請を受け取る前からすでに踏み出していたわけです。そう考えると第3話は燈子だけでなく侑にとっても「初恋のはじまり」である話と捉えなおすこともできるのです。

 

燈子との比較によって重くなる侑の悩み 

 続いては、第3話における演出面に注目しましょう。先ほどは燈子を意識する侑について考えてみましたが、実は第3話においてより重要なポイントは、侑が燈子を意識することにより、水面下で自分自身と燈子を比較してしまっていること、そしてそれにより自身の悩みを重くしてしまっている点です。

 たとえば、推薦責任者を改めてお願いする燈子とそれを引き受ける侑の場面を見てみましょう。 

 侑に推薦責任者を引き受けてもらい「ありがとう」とお礼を述べる燈子の表情からは喜びが感じ取れます。一方侑は初めてのキスに対して「何も感じなかった」という冷たく沈んだ言葉を述べています。

 実際にこのときの侑は「君といるとどきどきするの」という燈子の言葉を思い出しています。無意識のうちに沈む自分浮かれる燈子を比較することにより侑の悩みは本来以上に重くなっていきます。
 その表情は直後の悔しさとも切なさとも怒りともとれる複雑な表情に表れています。

  そんな侑の苦悩が決定的になるのが、続くインタビューと最後の喫茶店の場面です。

 たまたま手が触れたことによる燈子の表情の変化を見て、侑はわざと手を握るわけですが、ここでも浮かれる燈子沈む侑が対比的に描かれています。作中でも非常に印象的な「ずるい」という一言で侑の心情をうまく表現しています。

 そして最後の喫茶店の場面では、「好きでいさせて」と述べる燈子とそれを渋々了承する侑が、やはり対比的に描かれています。きらきらと光る燈子とそれを眩しく感じる侑

  第3話では、このように浮かれる燈子沈む侑が対比的に描かれることで、読み手に侑の苦悩がより重く伝われるように工夫されているのです。

 

二つの「ずるい」の意味

 第3話では物語の山場で「ずるい」という侑の心内語が二箇所で述べられています。
 両者は字面が同じでも、異なる意味で使用されているため、整理して読み進めてみます。

 まず一つ目の「ずるい」はインタビューの場面で出てきます。

 侑は意図的に燈子の手を握り、燈子は浮かれた表情を浮かべます。
 その直後に侑は息が止まるような表情をし、「ずるい」と心の中で呟きます。眉と口角はつりあがり、なんとも表現しにくい複雑な表情をしています。
 ここでの侑の心情をつかむためには、前提として前項の「比較」をおさえる必要があります。燈子と比較することにより、侑は自分の悩みをより重く受け止めていることでしょう。
 そのうえで、「七海先輩はわたしと同じだと思ったのに」という言葉を呟きます。この言葉からは自分と同じだと期待をしてそれを裏切られたという失望感が読み取れます。
 続く「手を握ったくらいでそんな顔するなんて」は「~くらいで」「そんな顔」という表現から侑と恋の距離がまだまだ遠いと思い込んでいることが読み取れます。
 そして「先輩はもう特別を知ってるんだ」という言葉と、直後の燈子を追いかける描写、さらに「わたしもそっちに行きたいのに」という表現からは、燈子のみが特別を知っていることへの嫉妬、自分だけ置いて行かれることに対する孤独感、追いかけようとしても追いつけない寂しさ、それによる焦りなどといった複雑な心情が読み取れます。 

 なお、この場面の侑の心情は燈子に対してだけでなく自分自身に対しても向けられています。両者に対する心情だからこそ、侑の表情も複雑になっているのです。


 二つ目の「ずるい」は喫茶店の場面です。
 こちらは、一つ目の「ずるい」よりは読み取りが容易でしょう。感情の向く相手が燈子一人だからです。
 場面は燈子が侑に「好きでいさせて」とお願いするところです。

 当初は「わたしに特別は訪れない」と自分自身の立ち位置を確定し、「はっきり言おう」「わたしは先輩のこと好きになれないって」と決めていた侑が、燈子により再び揺らぎ始めます。
 「好きでいさせて」という燈子の申し出に侑は「そんなの……変ですよ」と抗うものの燈子が一人で満足する旨を伝えられ「…それでいいのなら構いませんけど」と答えます。
 ここでの燈子は、狡猾であることは否めません。自分のことを好きにならなくていい、一方的に好きでいさせてほしい、ということを述べられ断ることをできる人間はストーカーのように害を与えてくる相手でない限りは、ほとんどいないでしょう。
 ただし、ここでの侑は「……またまぶしい思いをするだけなのに」と否定的にも捉えています。
 そのうえで「なんで構わないなんて言っちゃったんだろう」と疑問に感じ、燈子の狡猾さを認識したうえで「……この人はやっぱりずるい」と述べています。

 以上の説明を受けて、気づく方もいるかもしませんが、ここでのポイントは侑の心情そのものよりも、第2話における沙弥香の「ずるい」との対比です。

 第2話で笑みを浮かべながら燈子を「ずるい」と評した沙弥香、そして第3話で不満げな表情で燈子に「ずるい」と述べた侑。

 第3話の最後の場面では、燈子に対するそんな二人の関わり方の差異が強調され、物語の幕は閉じるのです。

 

 

2019/3/22/ 初校UP

やがて君になる 第2話 発熱

 みなさん、こんにちは!!

 

 さっそくですが、「やがて君になる」第2話の考察を場面ごとに記載していきます。

 第1話は、侑の戸惑いとともに終わりを迎えましたが、今回はさらにそれが加速し、侑と燈子の関係性に良い意味で波紋を残した印象を受けました。全体的に登場人物の関係性が変わりつつあることが丁寧に描かれていました。

 

 今回は、

変化と戸惑い

燈子と沙弥香のすれ違い

「発熱」と侑

 を中心に記載します。

 

 なお、以下の場面は考察しやすいように分けているだけで、読解における厳密な分け方からは逸脱している点をご容赦ください。

 

変化と戸惑い

場面1(湯船につかる侑~教室)

 冒頭からお風呂に入る侑が描かれています。第1話の燈子の言葉を思い出し、さっそく侑は戸惑っています。そんな気持ちを、蛇口からお湯の張った洗面器へ「ピチャン」と垂れる水滴による波紋で表現しているのがにくい演出です。侑の心に何かしらの変化が起き始めていると予想できます。

 続いては、生徒会の打ち上げです。ここでは前会長の久瀬先輩が登場します。あまり仕事をしない駄目な一面が描写されていますが、はしゃぐ燈子を見て「燈子のやつなんか浮かれてる?」と述べています。この時点では、他の部員たちは燈子の変化を感じ取っていません。唯一その変化を感じ取っている眼力の鋭さが、生徒会長を続けられた理由なのかもしれません。実際に、直後で侑に推薦責任者を頼む燈子の姿を見た沙弥香は呆気にとられており、つまり燈子の変化に気づいていないことがわかります。

 続く部分では、燈子に推薦責任者を頼まれて、困っている侑の様子が描かれています。ここでは、迷いやすいという侑の性格の一端が表れています。

場面2(バレーの授業)

 さらに次の場面では、燈子と沙弥香がバレーの授業を受けています。この場面までは戸惑う侑の姿が中心でしたが、ここでは戸惑う沙弥香が描かれています。燈子と沙弥香のやり取りからは、二人の関係性が読み取れますが、詳細は後述します。

 結果的に沙弥香は燈子の願いを受け入れつつ、「ずるい」と評します。

 なお、この場面における同級生の「燈子」「佐伯さん」という呼びかたの差異も見逃せません。クラスにおける二人の、級友との距離の取り方を端的に表現できているのが素晴らしい点です。

場面3(侑へのお願い)

 続く部分は沙弥香を介して燈子が侑を説得する場面です。バレーの会話の後で、燈子と沙弥香の間でどのような会話がなされたのかは想像するしかありませんが、沙弥香に「ずるい」と評されるくらいですから、燈子が促したともとらえられます。

 迷った末に侑は「佐伯先輩までそう言うなら」と推薦責任者の任を引き受けます。

 侑も沙弥香もここで表面上は戸惑いが消え、三人の立場が確定します。

 一方で、物語全体を俯瞰すると、燈子と侑の関係が加速するきっかけをつくったのが、沙弥香であるという事実が切ない皮肉にも感じます。

場面4(下校)

 そしてラストの場面です。まずは、おそらく学校に提出された立候補の書類が描写されます。書類に記されている名前の大きさが二人の性格をよく表しています。丁寧に堂々と大きめに書かれている燈子の名前は、まさに見られることを意識している燈子そのものであり、自己を肥大化させている性質が表れているようにも見えます。一方侑の字は、小さいながらかなりおおざっぱです。

 帰り道に第1話のラストの出来事について侑は燈子に問います。当人を前にしてこれをストレートに聞けるのが、まさに侑の強みともいえます。一方で、答えあぐねる燈子は、おそらく自分自身でもこの時点では心情を整理できていないことが読み取れます。冒頭から中盤では侑と沙弥香の戸惑いが描かれていましたが、燈子も戸惑っていたことがここから読み取れます。

 しかし踏切を渡っている最中に侑の発する「……好きになるとかないですけど」という言葉で燈子は自身の心情に気づいてしまい、作中でも非常に印象的な山場にさしかかります。燈子が侑にキスをする場面です。

 電車の通過によって二人きりになる描写が非常に美しく、唇を重ねる場面では、風がさっとふき、物語が走り始める疾走感が演出されています。侑のことが好きであると自覚する燈子。

 最後は視線を外して、侑も燈子も互いに戸惑いつつ物語は着地します。

 

燈子と沙弥香のすれ違い

 ここまでは、各々の戸惑いを中心に物語全体を見てみましたが、ここでは燈子と沙弥香を中心に考察してみましょう。

 ポイントとなるのは、バレーの授業の場面です。この場面からは二人の関係性が変化(すれ違いつつあること)が読み取れます。

 まずは、燈子と沙弥香の述べる「信頼」という言葉に対する重みの違いを考えてみましょう。

 沙弥香の「どうして(小糸さんを推薦責任者に選んだの)?」という問に対して、燈子は「一緒に選挙を戦って今から信頼関係を築いておきたいの」と答えます。それに対して「私よりもあの子との信頼を深めたいわけね」と沙弥香は問い直します。

 この沙弥香の言葉からは、侑に対する嫉妬心を含んだ強い想いが伝わってきます。

 対して燈子は「私たちの間に今更そんなの必要?」と問い返します。この言葉自体は、カウンターのできない優れた問だと言えます。つまり、ここで「必要」と答えれば、二人のこれまでの信頼関係を否定することになり、「いいえ」としか返せないからです。

 燈子は、沙弥香の持つ嫉妬心のような強い想いからではなく、戦略としてこの言葉を使ったといえるでしょう。また、本話のラストの場面を見る限り、この時点で燈子は侑に対しても、強い想いを持っていることを自覚していないことも推察されます。

 つまり、ここでの燈子の用いる「信頼」という言葉は、駆け引きのために使っただけでありあまり強い意味が含まれていないと考えられられるわけです。

  この「信頼」という言葉の重みのズレからも燈子と沙弥香がすれ違い始めていることが読み取れます。

 そして、沙弥香は「……もうずるいんだから」と燈子の意見に折れるわけですが、その表情は満足げに笑っています。

 直前の部分では燈子の「私たちの間に今更そんなの必要?」という言葉を受けて息を飲むような表情が描かれているため、なぜ満足げな笑みを浮かべていたのか疑問が残ります。

 そこで、ここではなぜ沙弥香が燈子の意見に折れたのか、その理由を考えてみましょう。

 まず一つ目は、直前の燈子の「私たちの間に今更そんなの必要?」という言葉に注目です。これを受けて沙弥香は息を飲むような表情をし、折れるわけです。

 燈子の「そんなの(=信頼)」という言葉からは、侑に対する以上の信頼が沙弥香に向けられたとも表面上は読み取れます。つまり、ここでの沙弥香はそんな燈子の気持ちに気づき、喜んでいるとも考えられますが、直後の沙弥香の「……もうずるいんだから」という言葉からこの説は否定されます。燈子の言葉が、戦略的なものであることを沙弥香は理解しているのです。

 では沙弥香の心情はどう読み取ればいいのでしょうか? まず「ずるい」という言葉のニュアンスから考えましょう。

 一般的に「ずるい」とはネガティブな意味を持ちますが、息を飲むような表情と直後の笑顔から沙弥香はむしろポジティブにとらえていることがわかります。そして「ずるい」には、ネガティブなニュアンスがありながらも「かしこい」というポジティブな意味も含まれます。

 では「ずるい」の対象はなんでしょうか? ここでは当然ながら直前の燈子の戦略に対してです。その戦略を目の当たりにして、沙弥香は息を飲み、「ずるい」と笑みを浮かべるのです。

 ここから察するに、沙弥香は燈子の聡明さに惹かれて折れたのが本当の理由であると考えるのが妥当でしょう。つまり沙弥香は思わず「ずるい」と表現した燈子のかしこさも含めて好きなのでしょう。だからこそ、直後で満足げな笑みを浮かべたのだと考えられます。

 と、同時にこの時点での沙弥香は、簡単に折れたことからも、侑に対する燈子の想いの強さにも気づいていません。

  ここからも燈子と沙弥香のすれ違いが読み取れます。

 

「発熱」と侑

 第1話でも言及しましたが、本作における「発熱」は「恋」を意味していると考えられます。そんな第1話を受け、第2話でも「発熱」が意味深に描かれています。ここでは、発熱しているのは誰なのかも読み取っていきましょう。

 まずは冒頭の湯船につかりながら燈子のことを思い浮かべる侑に注目します。

 ここでの侑は頬を染めています。発熱が恋心を表しているため、ここでの侑はお風呂によって人工的に発熱し、恋の擬似体験をしていると考えられます。ただし、あくまでも擬似体験であり、侑に自覚はないでしょう。(燈子が発熱しているか否か、あるいは自覚があるか否かは、この後の話で考察するので、ここでは保留とします。)

 少なくとも侑が発熱しているのは、さまざまな描写から読み取れます。それは侑の視線(意識)です。

 まず扉画では、通り過ぎる侑と燈子が描かれています。触れそうで触れない二つの手が、二人の未来像を映し出しているようで興味深いのですが、侑だけが燈子を見つめる構図に注目しましょう。なお、第2話からは侑が燈子を見つめる描写が増えていくのもポイントです。

 また、お風呂の場面や推薦責任者を引き受けるのを迷う場面でも、侑は燈子の顔を思い浮かべ、かなり意識していることが読み取れます。

 一般的に人は好悪どちらかの感情であれ、何かしら気になる相手のことを意識するものです。その点をふまえると、本来は関心がないはずの侑が、この時点で既に燈子を意識していることが読み取れます。もちろんその感情はまだ、「恋」と呼べるものにまで至ってはいないでしょうが、少なくとも「恋」をする土壌は形成されつつあるといえそうです。侑は燈子を「特別」とはいえないまでも「気になる相手」と認識しはじめています。

 第2話では、そんな燈子を意識する侑が自分自身に戸惑いつつも一旦は迷いから抜け出ますが、最後の唐突なキスによって、再び迷いの中に放りこまれて話が終わります。

 

 

2019/3/13/ 初校UP

 

やがて君になる 第1話 わたしは星に届かない

 みなさん、こんにちは!!

 

 さっそくですが、「やがて君になる」第1話の考察を場面ごとに記載していきます。

 全体を通しての感想は、話の構成や演出などによって登場人物の立ち位置や感情、今後の方向性を見事に表現している素晴らしい話でした。

 また、読み手の立場から見ると、「やがて君になる」という作品をどのような観点に注意して読み解けばいいのかがわかる読解のチュートリアルとしての役割も担っていたと思います。

 

 今回は、

侑の心情の変化

全体構成から読み取れる侑と燈子の関係性

本作のキーワード 

 を中心に記載します。

 

 なお、以下の場面は考察しやすいように分けているだけで、読解における厳密な分け方からは逸脱している点をご容赦ください。

 

侑の心情の変化

場面1(ベッドに寝転ぶ侑)

 1ページ目では、恋がわからないという侑の悩みが心内語で描写されています。

 侑の周囲には、恋愛漫画やCD・小説などが「きらきら」とした星とともに描かれています。 この「星」の描写はタイトルの「わたしは星に届かない」とも関連する本作の重要なポイントです。

場面2(教室~生徒会室)

  教室で、友人(朱里とこよみ)と会話している侑。部活が決まらずに困っていたら、先生から生徒会を紹介され、生徒会室へ向かいます。そこで、告白される燈子を目撃してしまいます。今回は、ここでの侑の心情を少し深く考えてみましょう。

 

 まず、とっさに隠れ「……」という侑の心内語からは、見てはいけないものを見てしまったことへの罪悪感が読み取れます。

 しかし直後の侑のしぐさにも注目してみるともっと複雑な心情が読み取れます。

 侑は、男の子の横顔をそっと覗いています。告白する男の子の顔は「きらきら」と輝いているように見え、そこで侑は目を逸らし、切ない表情を浮かべます。

 この表情からまず思いつくのは、恋をできない自分自身に対するやるせない感情です。ただし、ここでの心情はそれがすべてではありません。

 侑の現状の立場をふまえてみましょう。侑は自分自身も中学の同級生に告白されています。そのため、告白している男の子と中学の同級生を重ね合わせ、想いに応えられないことに対する罪に似た感情を持っているともとらえられます。

 

 続きです。燈子に見つかり、生徒会室へと侑は案内されます。「今の内緒にしといてね」と言う燈子と侑の間にはじわりと滲む円が描かれています。本作では、この演出は物語の起点となる重要な場面で頻出します。

 侑を生徒会室へ案内し、部屋の前で燈子は手を差し伸べます。迷っている侑と、その侑に(救いの)手を差し伸べる燈子、という第1話の二人の関係性が暗示されています。

 

場面3(教室~生徒会室~自室)

 舞台は再び教室へと戻ります。朱里とこよみと会話する侑。燈子に対する第一印象はかなり良かったと語り、朱里とこよみは恋話だと誤解します。

 一方で、侑は恋について悩んでいます。恋を知らない侑と朱里・こよみの対比が、机の距離や光と影によって絶妙に表現されています。こよみ達との間に、理解できない隔たりがあると、少なくとも侑自身はとらえているようです。

 続く生徒会室の場面では、燈子と沙弥香と侑が会話しています。多くの人間に告白されながらも全て断ってきた燈子。理由である「どきどきしたことない」という言葉に反応する侑を遮ったのはある男の子です。意図的ではなくおそらく偶然でしょうが、この男の子は今後の二人の関係を良い意味でかき乱すきっかけになるキャラクターです。

 場面は侑の自室に移り、同級生から送られてきたメッセージを見て悩んでいる様子が描かれます。スマホは「きらきら」と輝いていますが、侑があえて自分からスマホを遠く離そうとしている描写が印象的です。

 

場面4(教室~生徒会室)

 続く教室の場面では、恋に悩む侑が描かれていますが、ここでも光と影の演出が多用されています。侑に声をかけるこよみ。そんなこよみに対して侑は「ごめんね」と心の中で呟くのみであくまでも真意は語りません。二人との間に隔たりがあると感じているからこそ相談できない侑の孤独な気持ちが鮮明に伝わってきます。

 侑は燈子になら理解してもらえると思い、生徒会室へ向かいます。そして燈子に悩みを打ち明け、回想シーンへ至ります。

 侑の「彼のことは好きです」「でも断ろうと思っている」というセリフからは、本作における「好き」がいわゆる恋愛対象者に向ける「好き」とイコールではないことが読み取れます。回想シーンでは、告白され初めはわくわくしていたが恋ができない自分自身へ徐々に不安を感じているといった侑の心情が描かれます。元同級生の「特別」と直後の侑の「特別って気持ちがわからない」というセリフによって本作の「好き」が「特別」を意味していることが確定します。そして好きが理解できない自分自身に対する不安な気持ちが、徐々に影がかかる足元の描写で美しく表されています。

 そんな侑に対して、自分も同じだと暗に示して安心させる燈子は、直後に元同級生から電話がかかってきて焦る侑の手を握ります。

 燈子の助言に従い侑は同級生に自分の本音を語り、電話を切ります。直後に燈子の手が少し汗ばんでいることに侑は気づきます。

 「特別がわからない」という侑の気持ちを確認し、そのまま引き寄せる燈子。そして自分と侑とは違うということを宣言し、告白めいたセリフを放ち、侑の戸惑いとともに第1話は完結します。 

全体構成から読み取れること

■二人の物語

 冒頭の二人の出会いの場面で燈子が差し出した手が、侑に握られて、それを引き寄せるという第1話の二人の関係性がラストでようやく結実し、物語全体の方向性を示す形で終わりを迎えました。このラストの部分は、第1話の山場であり、燈子が初めて侑を名前で呼ぶことがポイントです。この部分が、燈子の最初の転換点であるといえます。

 第1話の時点ですでに、侑も燈子も悩みを抱えていたのですが、侑の悩みや特異性のみを読者は理解できる構成となっています。

 そんな侑の悩みがラストの燈子の助けによって一見解消されたかのように見えて(実は本質的な部分は何も解決されていませんが)、救われているのは実は燈子の方である、という対比が面白い点です。

 全体的に本作は読み進めるにつれ、それまでの部分の真意が明かされ、既出の描写が鮮やかに塗り替えられていくのですが、第1話において既にその兆候が表れています。つまり、本作を途中まで読み進めてから第1話を読み直すと、ラストの部分から、本作が侑だけでなく燈子も含めた「二人の物語」であることが理解できる構成となっているのです。

 ※「二人の物語」というのはアニメ版の監督である加藤誠氏も言及しています。

 

キーワード

※以下は蛇足となります。
■星と熱

 第1話においては今後重要になる二つのキーワードが初出します。「星」と「熱」です。

 まず「星」は、タイトルの「わたしは星に届かない」と、P.3などの描写などから、「恋」を示していることが理解できます。この星の演出は ラストの燈子との場面など、しつこいくらいに描写されているため、かなり意図的であることが理解できます。

 また、「熱」というキーワードは本話の時点ではまだ真意を理解できません。ただし、P.42の「少し汗ばんでいる」という表現が、2話のタイトルである「発熱」、第12話のタイトルである「種火」、第13話のP.89の体温の描写につながっています。つまり本作では、「熱を帯びる」ということが「恋心」を暗に意味しているともとれるわけです。

 

■光と影

 一方で、光と影という、これも作中を通して重要な演出も見逃せません。本作品においては恋ができるかできないかを光と影で対比されることが多く、実際第1話においても、光と影の描写が執拗に用いられています。

 

■他

・P.12の燈子のセリフ内の「分かりにくい」とP.34の侑のセリフ内の「特別がわからない」以降の表記ブレは意図的かは、後ほど検証します。

 

 

2019/3/10/ 初校UP